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私は疲れ切って、血を流して、彼の前に立つーー彼は座り込んだまま気付かない。猫をじゃらして遊んでいる。上手く声が出ない。ありったけの悪意を奮い立たせ、猫の柔らかい腹を掴む。たちまち腕に爪が食い込み、抉る。腕をしならせて、私がやって来た方向に投げると、鳴き声はあたりを彷徨いやがて消えた。

参考文献

安部公房 1974 犬 R62号の発明・鉛の卵

佐藤多佳子1997 イグアナくんのおじゃまな毎日

Poe 1843 The Black Cat

市川春子 2012 宝石の国

宮本輝 1988 避暑地の猫